はじめに
トラ技 Jr. 2017 秋号(通巻31号)で KiCad の存在を知り,Ubuntu 16.04LTS 上の KiCad ver 4.0.7 を使って回路の作成から gerber データの作成まで を行いましたので,その手順を記録しておきます.
参考資料
KiCad による回路作成
これまで使ってきた gEDA と比較するため, NPN トランジスタの固定バイア ス回路の基板を作ることにし,KiCad 上で回路図を入力しました.
回路部品の記号は豊富に用意されており,部品を並べておいてワイヤで配線 を行うというやり方は,従来と特に大きな変化はありません.KiCad は gEDA 以上に豊富な回路記号に加えて,大量の footprint が用意されており,特に footprint に関しては何を選べば良いのか迷うぐらいです.
回路記号と footprint の関連付けは,基板エディタ(Pcbnew)でも行えますが, 回路図エディタ(Eeschema)上で直接行うほうが簡単だろうと思います.マウスの 右クリックで出てくるメニューから,「コンポートネントを編集」->「編集」と 進むと,「フットプリントの割り当て」が実行可能になります.
回路中の部品には部品番号を設定する必要が有り,手動で行う他に,「ツー ル」->「回路図のアノテーション」から自動で実行することもできます. 入力が完了したら,電気的ルールチェックもやっておきます.「ツール」 ->「エレクトリカルルールチェック(ERC)」を実施し,指摘された問題を 修正します.回路図ができたら,「ツール」->「ネットリストの生成」で, ネットリストをファイルに保存しておきます.
基板デザイン
基板エディタは KiCad のメインウィンドウから Pcbnew を選択して起動 する他,回路図エディタから「ツール」->「プリント基板のレイアウト」 でも起動できます.
レイアウトを読み込むには,「ツール」->「ネットリスト」から「現在のネッ トリストを読み込む」を実行します。レイアウトを読み込んだ時点ではパー ツが密集しているので,パーツをバラけさせる必要が有ります.
パーツを単にバラバラに置き直す場合は,メニューの下の段のアイコンを用 いて「フットプリントモード」を選択しておき,編集画面内で右クリックで 表示されるメニューから「グローバル移動/配置」->「全てのフットプリン トを展開」を選択・実行します.
自動配置を行う場合は,まず Edge.Cuts レイヤーに「図形ライン」を書き 込むことで基板の外形を決定し,その内側にパーツを置いた上で,フットプ リントモードの状態で「グローバル移動/配置」->「全てのフットプリン トを自動配置」を選択・実行します.
パーツの配置をいじった後の配線の作成も,手動での配線と自動配線が可能 です.手動で配線を行う場合は,配線を行うレイヤーを選択(半田面は B.Cu)しておき,「配線とビアを追加」ツールを選択して,結線を行います.
自動配線を行う場合,「配線モード」を選択しておき,編集画面内で右クリッ クで表示されるメニューから「自動配線」->「全てのフットプリントを自動 配線」を選択・実行します.このとき,レイヤーの設定を「2レイヤー、表 面のみ部品実装」としていても両面に配線を作成してしまうため,「導体ペ アレイヤー」の選択で B.Cu 面だけを設定しておくことで,配線を裏側だけ に限定することができるようです.尚,配線の太さはデザインルールを変更 することで希望の太さに設定できます.
グラウンドの配線を領域で行うには「塗りつぶしゾーンを追加」ツールを使 います.領域の頂点を選んだ所で,レイヤ,グランドにパッドを接続するネッ トを選び,必要があればパッド接続を「サーマルリリーフ」に設定して,ポ リゴンでグランドとして設定する領域(もしくは回路全体)を囲みます.
配線の太さは「デザインルール」->「デザインルール」から「デザインルー ルエディタ」を起動し,「グローバルデザインルールタブ」で「カスタム配 線幅」登録することで,複数を選択できるようになります.ネットクラスエ ディタ」タブで,新しいクリアランスや配線幅を設定したネットクラスを作 成し,メンバーシップエリアの左右を異なるクラスに設定することで,ネッ トの所属するクラスを変更することができます.自動配線を行った場合,一 旦全ての配線をデフォルトの太さで配線するようですが,ネットクラスで決 定した太さに手動で変更することができます.その場合,配線上で右クリッ クし「配線幅を変更」を実行します.
KiCad の優れたところは,「表示」->「3Dビューア」を起動する事で,基板 の様子を 3D CG で確認できるところにもあると思います.表示されるパーツ の様子は footprint によって決まっているようです.
最終的には「ファイル」->「プロット」から,出力フォーマットとしてガー バーを選択して「製造ファイル出力」と「ドリルファイルの生成」を実行す ることで,基板加工機で使用するデータを出力することができます.出力さ れた gerber ファイルとドリルファイルの形式は Gerber/RS-274X と認識さ れました.